「怒り」の感情は、イライラする、ムカッとする、シャクにさわる、カチンとくる、ブチキレるなど様々な言葉が使われます。それだけ人間の感情が不愉快になる機会は多いということでしょう。きっと皆さんもたくさんの怒りを体験してきたと思いますし、今まさに怒りの感情の真っ只中におられる方もいるのではないでしょうか。
怒りの原因は様々です。自分の思い通りにいかない時、自分を責められた時、誹謗中傷された時、さらには理不尽な扱いを受けたときなど挙げればきりがありませんが、今日は怒りのあとの感情の処理についてお話ししたいと思います。
怒りは不愉快な感情であり、ネガティブな感情です。当然、そうした感情を誰しも内側に溜め込みたくないので瞬間的に激しい口調で爆発させてしまうこともあります。ただ、それは何の問題解決にもならないばかりか、相手との関係性が壊れるなど大きな痛手を被ることになります。
今回は怒りのコントロールとその後の怒りの処理方法についてお役に立てる内容を提供できればと考えています。はじめは怒りの根源・背景についてお話させていただき結論的なお話は後半になりますが、最後までご覧になっていただければお役に立てると信じています。
自分の怒りの根源・背景を探ってみる
人には、「自分を理解してもらいたい」、「自分の存在を認めてもらいたい」、「愛されたい」といった承認欲求が備わっていますが、そうした欲求が満たされないばかりか時として阻害されたり攻撃されたらどうなるでしょうか。自分が存在する意味が見いだせない、自分はダメな人間だ など”自己否定感”を募らせていくに違いありません。
ここで、自分は怒りの感情を持ちやすいと思っておられる方は、一度ご自分の生育歴を振り返ってみてはいかがでしょうか。例えば、ご家族の事情で親にたくさん甘えることができなかった、自分の気持ちを聴いてもらえなかったなど十分な愛情を受けられなかった、抑圧されていたという経験をお持ちではないでしょうか。そうしたマイナスの思いが怒りの誘因材料になっている可能性もあります。
また、過去あるいは現在の状況において、良い成績(業績)を残さねばならない、良い母親・父親でなければいけない、弱音を見せずに頑張らなければならないなど、様々のプレッシャーを抱え込みながら頑張っておられるならば、そのことも怒りを誘発する要因になっているかもしれません。
もちろん、上の例だけではなく、人それぞれの置かれた環境・状態で怒りは発生し、その怒りの種類も様々です。まずは、怒りを生み出す背景にはそうした自己否定感やプレッシャーを生み出す考え方や行動があるのではと自己理解を深めることも大切です。このように、自分を内側から見つめなおすことが怒りという不愉快な感情と向き合うきっかけになります。そして、最終的には自分の怒りを自らコントロールできるよう最善の方法を探っていきましょう。
溜め込んだ怒りは消えることはない
怒りは外に向けた大きなエネルギーです。それだけに「怒りを爆発させれば相手との関係が完全に壊れ修復が不可能になってしまう」、「そうすれば自分の居場所がなくなるかも」、「周りからも不評をかってしまう」と色んなことが頭をよぎり思わず怒りを抑えこんでしまうことがあります。
この怒りの溜め込みは、自分が我慢することで全体の平穏を守るという犠牲的な行動でもあります。ただ、このようにずっと消化しきれない感情を内側に残してしまうことは、まるで心の中に地雷があるような状態を招いてしまうのです。
一例として、感情のもつれで以前怒りをぶつけ合った二人がいたとします。偶然、久々再会した際に一方が「あの時のことは水に流してお互い仲良くやりましょう」と言い、もう片方が「そうですね。こちらこそよろしくお願いします」と答えたとしても、少なくてもどちらかに潜在的な怒り(地雷)が残っている限りは表面上和解したにすぎません。これでは二人が心と心を交わすこともできません。やはり、お互い怒りの本質的なものを理解しないまま、その感情だけをきれいに消し去ることは難しいのです。
「怒り」が ” 何かを責めること ” になっていないか
これまで、怒りをため込むことは決して良くないという話をしてきました。では、怒りをストレートに相手にぶつけたとしたらどうなるでしょう。おそらく、不満や不愉快が怒りの根っこにあれば、「お前はどうしていつも○○○○なんだ!」、「あなたの○○○○が気に食わない!」、「君とはもう口もききたくない!」など、相手を責める言葉しか出てこないでしょう。
これを聞いた相手はおそらく自分を攻撃された感覚しか残らず、本能的な防御、対抗の気持ちが前面に立ち、更に大きい声で「何を言う!お前だって・・・」、「こっちも我慢してきたんだ!言わせてもらうけど・・」といった言葉で応戦するに違いありません。こうなると、終わりのない主張、言い換えれば単なる口ゲンカになってお互い気持ちをすり減らすだけの結果になってしまいます。
それを避けるための方法が ”相手を責めないで自分の感情を正しく表現する” ということになります。次にその具体的方法を紹介します。
「怒り」を ” 自分の感情を表現する機会 ” に変えよう
自分の怒りの感情を正しく相手に伝えるためには何に気をつければいいのか。自分が冷静に話すことはもちろん、相手の状態に合った適切な言葉で説明する必要があります。以下、その基本となる3項目について挙げたいと思います。
① 自分の怒りを一旦客観的に見つめる
例えば相手とのやりとりで不満が募りイライラが爆発しそうになったとします。その瞬間に感情的な言葉を発するのではなく、自分を客観的に見つめ、「ああ、自分は相当怒ってるな・・」と一旦自分の気持ちを認識しましょう。わずか数秒でもいいです。一呼吸おくという感覚で気持ちを整理する時間が必要です。
② 自分の感情をすぐ伝えるか後で伝えるべきか考える
怒りの感情をその場ですぐ伝えた方が良いのか、あるいは別の機会にあらためて伝えるべきか考えましょう。相手の感情面もよく考え、今が不穏な状態ならば話が成立しないこともあります。十分理解してもらうには、その場面・環境、時間が大切です。
③ できる限り「私は・・・と感じている」など、自分の感情を伝える
怒りを単純に爆発させると、前述のとおり「お前は何度言ってもダメなやつだ!」と相手を責めるだけになってしまいます。例えばあなたが上司の立場で、部下が仕事に身を入れないばかりか常にあなたに反抗的な態度をとっていたとします。その時は、「私は、君が仕事にやりがいをもって取り組めていないことをとても残念に思っている」、「君が持てる本来の能力を発揮してくれればとてもうれしい」、「私も、できれば君の考えを詳しく聞いて改善できるところはあらためていきたい」など、私を主語として、何が嫌だったのか、どう感じたとかを伝えることで、怒りの本質的なものを表現しやすくなるのです。また、相手にも冷静に聴く機会を与えることで、強く反発されることも避けられます。
”怒り”といえば、大声、荒々しい口調、激しい身振り手振りというマイナスイメージがつきものですが、①~③のように冷静になって穏やかに感情を表現することで、”怒り”がきっかけで問題解決へとつながることもあります。
最後に。日常的な怒りのほとんどは人間関係によるものです。異なる考え、生き方を持つもの同士が支え合って生きなければならないこの社会。感情が大きく揺れ動くことは当然あります。やはり最後は、自分を大切にする、相手も大切にする、その先にこそ真の問題解決があると信じたいものです。
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