ここでは、過去にお受けした相談事例を、「お悩み相談」としてその概要を紹介したいと思います。
【ご相談内容】 子どもの将来を考え教育熱心になり過ぎる自分がいる。つい口うるさく言ってしまい子どもと心が通わない状態。家庭全体の雰囲気も良くない。どうしたらよいだろうか。
小学5年生女児の母親。夫との3人家族。子どもは幼少期までは素直で育てやすかったが、小学生以降、勉強や生活態度について気になることを言い続けるうち、家族関係がぎすぎすしてきた。子どもは反抗的な態度をとるようになった。
子育てに一律の正解はありません。その理由は、親、子ども、それぞれの性格、特性の違いがあり、各家庭の置かれた生活環境も異なるからです。
しかし、基本として外せないことがあります。それは、子どもを一人の「人間」として尊重してあげることです。それは、決して甘やかすということではなく、子どもを「自分の意思、人格を持った一人の人間」として接することを忘れてはならないということです。
子どもは0歳からおよそ5歳くらいまでは身辺自立ができないために、ほとんど親に守ってもらうこととで自分の生活を送っています。
なので、親が「○○しなさい」、「○○してはダメよ」といったことは、自分を守ってくれる存在からの指示として、言うことを聞いてくれることがほとんどです。(ただ、この頃から発達上の特性が現れている子どもさんは異なる場合がありますが)
そうした言うことを聞いてくれる状態をとらえて、多くの親が、「素直でいい子だった」と印象を持ってしまうことも事実です。
肝心なことは、子どもがほぼ身辺のことができるようになり、家以外のフィールド(幼稚園・小学校など)に出るようになると、子ども自身が外社会で生き抜いていくためにそれなりの内面的成長、変化を遂げることをしっかり認識することなのです。
特に小学校ともなると、色々な決まりごとやとるべき行動があり、その中で自分の頭で考えて判断することが求められます。それに加え、数字や文字に関することのほか、多くの科目を学び、覚えなければなりません。
さらに、友達関係を築いていくために、人付き合いにも神経をすり減らすなど、かなりのエネルギーを使います。
そんな学校から家に帰って来たとき、親から、「今日は学校でちゃんと勉強できた?」、「テストの成績はどうだった?」、「宿題は早めに終わらせてね」など ” もっと頑張ってね ” 的な言葉だったらどうでしょう。
心と体を休める場所であるはずの家が、ますます疲れを増すような場所になってはいけません。
子どもが家に帰って本当に話したかったのは、「今日は友達の○〇ちゃんから○○って言われて本当に嫌だった」、「先生から○○って怒られた。自分は何も悪いことしていないのに」という不満かもしれません。それを身近で信頼できる親に聴いてもらえれば、心の傷が少し癒えて、「また、明日から頑張ろう」と思えるかもしれません。
大切なことは、子どもができるだけ本音で語れる家庭の雰囲気を作ってあげることです。
その前提として、まず、
● 「子どもの将来のためを思って」が、親自身の不安を消すための言い訳になっていないか
● 親自身が子どもと対話することなく、一方的にある一定以上の ” 期待値 ” を設定してしないか
● 親自身が自分で成し得なかったことを、子どもの目標としていないか
といったことを振り返ってみる必要があります。
そうした上で、
● まず、子どもの素直な気持ちを時間をかけて聞き取る(子どもが楽しいと感じること、嫌だと感じること、関心があること、得意なこと、心がホッとする時間 など)
● 親として、子どもがとても大切な存在であることをわかりやすく伝える(成功しても、失敗しても、うまくいかない時も全部含めて「あなた=子ども」が大切な人であること)
● 子どもを守る親として子どもに意見を言うことはあるが、それに対して、子どもからも意見は言っていいんだよ と伝える
といったことをしていけばよいと思います。
また、今回のケースは、夫が妻に子育てを任せているという典型的な例でもあったので、お父様にも、父と母が子どもさんに関する情報や教育方針を共有することの重要性、お二人で十分時間をかけて話し合うことの重要性をお伝えしました。
家庭内のコミュニケーションがうまくいかず、ぎすぎすした関係になっているときは、家族の ” それぞれの思いがすれ違っている ” ときです。
皆、「家族幸せに暮らしたい」と同じ目標は持っています。でも、それぞれの「幸せになるためには○○すべきだ」、「そのためには、○○しなくては」という思いが違います。
ですから、その違いを認識しなければ何の問題解決になりません。
家族がうまくいかない時にとるべき行動は、まず話してみることです。もっというなら、まず、相手の思い=言い分をじっくり丁寧に聴いてあげることです。
自分の思いを話す機会が一切なければ、人は希望を失ってしまいますが、胸の内を十分話せたときに人は「希望の光」が見えてきます。
あきらめずにおそれずに、話してみましょう。大切な家族なのですから。
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