障害者として働く自分に限界を感じる【お悩み相談】

お悩み相談

ここでは、過去にお受けした相談事例をもとに、「お悩み相談」としてその概要を紹介したいと思います。なお、相談の趣旨は変わらぬよう、個人が特定できないよう内容の一部のみを変えています。

【ご相談内容】 軽度の障害者として紹介された食品工場で働いているが、与えられた仕事の内容や職場環境などに満足できない。また、やりがいも得られないし、将来に不安がある。

20歳。男性。高等特別支援学校を卒業後、進路相談で決めた食品会社の製造ラインで働いている。就職前の実習を経て自分にも十分できる作業だと自信を持って働き始めた。

永田さん(仮名)は、食品製造部門のラインの一員として食品を容器に収めるまでの一連の作業を担っており、まじめな性格で与えられた仕事はきちんとこなしており、上司には信頼されています。

そんな永田さんですが、「実は….入社から1年たった今でも、食品を詰めた箱に最後にフタを乗せるだけの単純作業をずっとやってるんです。やりがいがなくて…」と話し始めた。そして、「確かに入社時の面接では、『いくつもの指示を受けることが苦手なので、自分のペースでできる仕事をしたい』と こちらから申し出たのですが…ここまで単純すぎる作業だと..」と元気なく話されました。

永田さんは、「まあ、この仕事が自分に合わないことがわかって良かったかなと..。自分は元々ゲームが好きでこういった食品関係よりデジタル系の仕事が合ってるというか..もし可能ならyoutuberにも興味があって..」とも話され,最終的に転職を考えているとのことでした。

また、「障害者として先入観で見られることが辛いです…確かに周りの人が色々気遣ってくれることはありがたいのですが、何より自分ができる限界があるんだな という感覚になって…将来が不安になるんです」と話されました。

”今”の状況がすべてなのか? 自分の将来は”自分の行動”で変わる!

永田さんは、これまで与えられた仕事を自分なりに懸命にやってきたけれども、仕事のやりがいをどこに見つければいいのか、また、そもそも仕事のやりがいとは何なんだろう といった原点の悩みなど、色々胸の内を話されました。

私は、そうした永田さんの思いに共感しつつ、これからの”とるべき行動”としていくつかの提案することにしました。それは、永田さんが、”もっと自分の能力を発揮してやりがいを得たい” というしっかりした意思を持って、悩みつつも前に進もうとしていること自体が、必ず永田さんの将来を変える力になると思ったからです。

助言として永田さんにお伝えしたことは、
ご自分が働く上で感じたことや ご自分の意志・希望を会社側にしっかり伝えるということです。
具体的には以下の内容です。
・私は現在の業務を十分こなせるようになったので、新たな業務で自分の可能性を試したい。
・私は○○が得意で○○にも関心がある。今後、そうした業務があったら是非チャレンジしたい。
といったことを、まず上司に伝える。
もし、そうした意思を伝えにくい場合は、障害者の就労を支援する団体(障害者就業・生活支援センター)に間に入って関わってもらう。

永田さんは、高校卒業後、紹介されたお仕事を黙々とまじめにこなしてきました。社会に初めて出られたということもあって、当然のように ”仕事=与えられた業務をきちんとこなすこと” と信じ、言い換えれば”受け身”的な日々を過ごされてきました。
今回は、永田さんが会社という組織の一員として働いておられる以上は、ご自分が感じたことやご自分の意志・希望を会社側に伝える権利があるということを理解され、気持ちが楽になった様子でした。

より良い自分を生きるなら 誰かに頼る勇気も必要!

永田さんはその後、思い切って地元の障害者就業・生活支援センター(※)にも相談に行かれ、ご自分の思いを全て話されました。
障害者就業・生活支援センターは、これまでの永田さんの生育歴から現在のお仕事の詳細まで聞き取って下さり、現在の課題や今後について計画も立ててくださったとのこと。
そして、今は支援センターが会社側との調整に入ったり、永田さんとの定期面談で悩みを聞き取るなどして、精神的にも安定した職業生活を送っておられます。
永田さんは、「周りのサポートを受けながら、自分が成長している気がします。自分は一人で悩みを抱え込むタイプだったけど、誰かに頼ってほんと良かったです。」と振り返られます。

※ 障害者就業・生活支援センター・・・障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的として、全国に配置されている。

なお、永田さんは現在入社3年目となり、業務内容は、食品工場のラインの中枢部をなすベルトコンベアーの調整操作の役割を担っています。
ご本人は、「ライン上で製品の不具合が発生したらコンベアーを急きょ止めたり、その日の生産目標量に合わせスピードを調整するなど、一時も気が抜けない状況で大変です。でも、とてもやりがいがあります。メカにも強くないといけないので色々勉強してます。」とお元気そうです。
そして、「工場長とも気軽に話ができるようになりました。当面、このまま頑張りたいです。まあ、何かしたい仕事が別に出てきたら…その時考えます。」と照れたように笑いました。

おわりに

さて、障害者権利宣言では「障害者が等しく人間としての尊厳を尊重され、平等の権利を有し、社会への完全参加と実質的平等とを確保されるべき旨」が定められています。

障害者の社会参加の場としての就業の機会確保や障害者への合理的配慮など、今後も取り組まなければならない課題はたくさんありますが、何よりも、まず、障害があられる方々の気持ちやニーズに”寄り添う心”を持つことが大切です。
これから障害者、健常者の交流の場が増えるとともに、障害者、健常者の区別なくご自分の能力を最大限に発揮できて、皆が”生きがいを持てる”世の中になってほしいと切に願います。

メンタルヘルス・キャリア形成カウンセラー。
これまで1000人余りの方々の心の声をお聴きしてきました。皆「自分らしく、より良く生きたい」と願っています。そうした思いを少しでも応援できればと思っています。

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