あなたは今、不満や不安を抱えて生きていますか。それとも悩みのない満ち足りた生活を送っていらっしゃいますか。もし、あなたが、いつも心が晴れない、思い通りにいかない、自分自身を否定しがちであれば、今日の記事を是非お読みいただきたいと思います。
実は、日頃から不満・不安を感じやすいという人の中には、”自分を好きになれない”、”性格を変えたいが変えられない”、”生きている意味を見いだせない” という負の感情をひきずっている人が多いのです。
では、そうした感情は消すことはできないのか。性格、気質、運命は変えることはできないとあきらめるべきなのか。 ー いえ、あなたは変わることができます。そのためには、心に残っているマイナス体験、トラウマと向き合い、過去の自分を理解することから始める必要があるかもしれません。
生き辛さは、”より良く生きたい”思いの裏返しとも言えます。自分が望む理想の人生に近づけるよう、まず、”本当の自分を生きること”を目標にしてみませんか。
いつも「心に重い雲がかかっているような感じ」の私
今回は、過去のカウンセリング事例からお話しさせていただきます。(個人が特定できないよう内容の一部を変えています。)
Kさんは、30歳女性。小学5年生、保育園児(4歳)、2人の女の子を育てていらっしゃいます。3年前に離婚され、現在、スーパーの経理事務(非正規職員)のお仕事をされています。お悩みは「仕事、子育てはようやく安定してきて日々の忙しさの中にも充実感を感じる。でも、ふとした時に気持ちが落ち込むことがある。心に重い雲がかかっている感じ。そして繰り返しの日々をむなしく思うことがある」とのこと。
1~2回目のカウンセリングでは、日々の生活の忙しさや職場での人間関係など小さな不満を話すKさんでしたが、3回目のカウンセリングに来られた際、手首を見せ、「これ・・、リストカットの跡なんです・・」とご自分の過去について話し始めました。
私の過去に向き合うことの意味
Kさんは高校卒業後、アルバイト先で知り合った男性と19歳のとき結婚。その年に第一子を出産。収入が少なく生活も苦しかった上、子育ても手探り状態で夫婦喧嘩が絶えなかったようです。その頃夫の暴言暴力も始まりましたが、子供のためにとなんとか耐えて過ごしてきました。
Kさんは元々ご実家の父母とも折り合いが悪く、自分の人格を否定する親に反発し精神的に不安定になり、高校生の時リストカットを繰り返したとのこと。19歳で親の反対を押し切って結婚したため、親に助けを求めることもできずに頑張ってきたKさん、第二子が生まれた後、ますます悪くなる夫婦関係の維持に限界を感じ離婚。ただ、そうした状況を理解した上で好条件で雇用してくれた現在の職場に縁があり、社会福祉制度を利用しながら今まで何とか生活してこれたとのこと。
堰を切ったように色々な過去の出来事や思いを話されるKさんに対しては、聴き手として何か言葉を返す必要もなく、ただうなずくだけでした。Kさんは、これまでの辛く苦しい日々を思い出しながらも、二人の子供さんをここまで育ててこられたご自分の頑張りをなぞっているように感じました。
Kさんには、張りつめてきた頑張りの糸が切れないように、今後、お仕事・子育ては7~8割できれば十分という気持ちでこなすことや、ご自分の心を癒す何か愉しみを見つけてはと、ご自身のケアについてお話しました。そして、もうひとつ、過去のご両親との関係を一度振り返ってみられてはとお話しました。
過去の私を癒すことができるのは今の私
しばらくぶりに来られたKさん、開口一番、「昨日、いいことがあったんです」と、嬉しそうに小5の娘さんの話を始めました。昨日は小学校の参観日でKさんは朝方職場に立ち寄り事務処理を短時間こなし学校に駆け付けたとのこと。少し遅れて学校に着いたのですが、その時娘さんのホッとした笑顔が印象的だったとのこと。
授業参観も終わり、最後に子どもから親へ手紙を渡すイベントがあり、娘さんは照れてうつむきながらKさんに手紙を渡しました。そこには、「お母さん、いつもいつもありがとう。お仕事大変なのに、お料理やおせんたく、○〇のお世話までありがとう。○〇はママの子どもでよかったです。」と書いてあったったとことでした。
Kさんは、これまでがむしゃらに頑張ってきたのですが、自分のあせりやイライラが子どもに伝わったり、十分向き合えなかったりと、ずっと自分を責めてきたようです。娘さんの「ママの子どもでよかった」という短い一言でどんなに救われたことかと、涙を浮かべながら話されました。
そして、ご自分のお母様について、「実は私自身が、『お母さんの子どもでよかった』と言えずに立ち止まってることに気づいて・・」と話されました。母の意見や指図にただ従うしかなく我慢を続けた幼少期、そこで重ねた失敗は全部自分のせい、私がダメなんだと思い続けたといいます。そうした体験を重ねれば誰だって自己肯定感は得られないでしょう。
きっと「誰か助けて」と叫んでいる幼少期のKさんがまだ心の中にいるのではないでしょうか。時は流れても、今大人になったKさんが、「大丈夫だよ。あなたは何も悪くない。悩んで苦しんでいるあなたが正しい。もう頑張らなくていいよ。」と声をかけることができます。心の傷は、その痛みをわかっている自分しか癒すことはできないと思います。こうしたお話をKさんにお伝えしました。
その後のKさんは、お仕事、子育てにと、忙しい日々に変わりはなかったのですが、気持ちの整理がつかれたのか、「頭の重い雲は取れて・・今、だいぶ晴れ渡ってきつつあります」と話してくれました。そして、日々の出来事のほかご自分の気持ちをストレートにお話しすることが多くなりました。また、最後の日に「子どもの成長って早いですよねー。私も負けないよう前に、前に、ですね。」と穏やかに話す表情がとても印象的でした。
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