職場に”愛”はあるか?

エッセイ

「仕事」ー。 言葉のイメージとしては、”人が生きていくために必要不可欠なもの”、”自分、家族を守るため嫌でも避けられないもの”といった義務感を伴う感じですが、一方で、”誰かの役に立っていることで生きがいを感じる”、また、”社会での生き方を学ぶことで、自分を成長させてくれるもの” とプラスのイメージを持つ方もいらっしゃると思います。
今日は、その”仕事”をする場所=「職場」について、私なりに思うことを書いてみます。

さて、あなたがこれまで経験した職場は居心地が良かったでしょうか。
職場が快適でストレスなしに仕事に打ち込めれば最高ですが、ほとんどの方は職場での色んな悩みを抱えながら頑張っておられるのではないでしょうか。では、少しでも居心地の良い職場にするには、どうすればいいのか。私は、職場という厳しい現場の中にこそ”愛”が必要なのではと思うのです。(当たり前じゃないかという声も聞こえてきそうですが、あえて、職場にあまり馴染みのない”愛”という言葉を使いました)

”愛”という言葉は、家族、パートナー、など身近な存在に対して使うことが多く、他人の集合体である会社などで使われることは少ないですよね。でも、会社などは、明確な目標を共有しながら共に闘っている仲間という意味で、より深い絆が必要になります。真の絆は、お互いを思いやる愛情なしでは形成されません。上司・同僚・部下がうまく連携できている職場というのは、お互いの信頼関係=絆ができているからですよね。

もちろん、人間同士、お互いの不平・不満はたくさん生じると思います。「そんなに簡単に絆なんて生まれない。現実は厳しいよ。」っていう声も聞こえそうです。でも、それですぐあきらめるというのも嫌ですよね。自分がいつも通って長い時間を過ごす職場が少しでも快適な場所になれば幸せじゃないでしょうか。果たして、そんな理想に近づくことは難しいことなのでしょうか。

さて、先日、テレビのドキュメント番組で、ある会社の社長さんの経歴が紹介されていました。
その社長さんは、70歳代、女性でした。夫が社長として会社を発展させたのち50歳代で急死され、急遽、社長業を引き継ぐことになったとのこと。
とは言っても、ご本人は一度も会社勤め経験がなく、それまでも、子供二人を育てて専業主婦として生活してこられた経緯もあり、社長になることに大きな不安があったようです。当然だと思います。
そうした中、自分なりに、この会社のためにできることを精一杯やっていこうと社長就任を決意されたといいます。

そんな社長がまず初めにやったことが、社員全員との面談だったといいます。
社長は、まず、会社を支えている社員一人ひとりのことを知ること、それぞれがどんな思いを持って働いているのか理解することから始めようと思ったようです。実際、多くの社員から仕事上の悩み、ワークライフバランスの悩みが聞かれ、その具体的な聞き取り内容のおかげでその後の職場改善がうまくいったともお話しされています。
一例をあげると、産休・育休の取得に関しても一人ひとりの事情に応じた配慮をすることで、職員のモチベーションも上がったようですし、産休後の復帰率も100%だったとか。また、そんな社員さんが子育てが終わった後、より会社に貢献してくれる度合いが強くなっているとの評価もされていました。そのほか、色んな改善策を打ち出すことで会社全体の活性化が進んだようです。

これらを観て私が感じたのは、「社員さん自身が、”会社から愛されている”感覚を味わったのでは」ということでした。
通常、社長さんが交代される時は社員の方々も不安になると思います。まず、就任のあいさつでは、新しい会社の方針、社員への訓示、激励など社員に求めることが多くなりがちです。でも、この社長さんは、まず相手(社員)の声を聞くことから始めたのです。
もし、誰かが自分に真剣に向き合って、「今の状態はどうなの?」、「何か悩みはないの?」、「どうしてほしいと考えている?」と聞いてくれたら、気持ちはスーッと落ち着くと思います。誰しも、自分をよく理解してもらいたいという本能を持っています。その聞き取りで全てが解決するわけではありませんが、自分を大切な存在として認めてくれることが何よりも大切だと思います。

世の中、成果主義というか、短時間でより質の良い仕事を求められる風潮があり、働く人がモノとして使われている感覚を覚えることさえあります。そんな現代こそ、自分が血の通った”人間”として日々悩みながら頑張っていることを理解してくれる喜びは大きいと思います。

当然、それぞれの会社の状況で違いがあり、「うちの会社は問題が多すぎて改善は無理」、「うまくいく会社って、黒字経営が続いて余裕があるんだろうな」など意見もでてきそうですが、すっかりあきらめてストレスをため込みながら日々を過ごすのか、改善をあきらめずに、自分にできることから着手していくのか結果には大きな違いが生じます。

今日のお話は、社員を大切な存在として向き合った社長さんの話でしたが、社員が同僚・上司に向き合う時も同じように”愛”が必要だと思います。
例えば、いつも不愛想で厳しいことばかりいう上司とコミュニケーションが取りにくい関係だったとします。もちろんそのままでは、同じ業務を円滑に進められる”絆”も生まれにくいでしょう。
そんな状況を打破するために、思い切ってこちらから話しかけてみましょう。仕事の話だけではなく趣味、世間話、何でもいいのです。意表を突いた話題ならなおさらいいと思います。要するに、「話を交わすことであなたのことを理解したいのです」という思いが伝わることが大事なのです。
自分が大切に思われている、そのことから人間同士の良好な関係が生まれていくと思うのです。

メンタルヘルス・キャリア形成カウンセラー。
これまで1000人余りの方々の心の声をお聴きしてきました。皆「自分らしく、より良く生きたい」と願っています。そうした思いを少しでも応援できればと思っています。

さたし 朗をフォローする
エッセイ
さたし 朗をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました