目まぐるしく移り変わるこの社会。そして複雑にからみあう人間関係。
そんな中で、自分の心がすり減っていく感覚はありませんか?そうした生活を積み重ねていくと当然心身もも悪い影響を及ぼします。
今回は、そんなあなたに是非お読みいただきたい記事です。
悩みや不安が混沌とした状態では、生きるエネルギーはどんどんダウンしていきます。人生を達観し、シンプルな考えを持つことで、新たなエネルギーが生まれてきます。
そのヒントとなるひとつの作品を紹介したいと思います。
「方丈記」との出会い
唐突ですが、あなたは、『方丈記』という作品をご存じですか?
国語の教材で取り上げられるのでご存じの方も多いと思いますが、作者の鴨長明(1155~1216年)は、平安時代末期から鎌倉時代前期にかけての随筆家・歌人です。
「行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。淀みに浮かぶうたかたかは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある、人と栖(すみか)と、またかくのごとし。」と有名な冒頭の文章ではじまる方丈記。
この名文は、”絶えず流れゆく川だけれども、その水のひとつひとつは違っており、姿かたちも絶えず変わっていく”という意を表したものですが、
現代語訳するならば、「流れゆく川の流れは途絶えることがない。しかし、そこを流れる水は元の水ではない。よどみに浮かんでいる水の泡は、形が消えたり、できたりして、長くそのままの状態でとどまっている例はない。」と述べ、そして、最後は、「世を生きる人やその住む家についても同じことが言えるのだ 」という文で締めくくっています。
この”無常観”は、一見すると厭世観や消極的な生き方を連想してしまいますが、「方丈記」を最後まで読み終えたとき、この無常な世の中だからこそ自分自身にあった幸福感を得ることができ、そして最良の生き方も模索できるのだという強いメッセージを感じることができます。
” 自分を生き抜く力 ” を教えてくれた「方丈記」
結論的に言うと、私は「方丈記」を読んで、” この世の森羅万象、自然界も人間社会もなかなか自分の思い通りにいくことはない。極端な話、自分の生き死にも人間が自分で決めることはできない。だからこそ、今ある現状にしっかり向き合い、自分自身で最善の道を選んで進むしかないのだ ” と強く感じたのでした。
鴨長明自身、色々な不遇、困難を味わい、それに加え大飢饉、大地震、疫病、といった世の惨状をに遭遇し、辛い思いを重ねてきました。挫折感、孤独感もたくさん味わっています。ただ、「この世には心休まるところはどこにもないのだ」と思いつつも、常に自分を見失うことなく、日常の何気ない暮らしの中の歓びや季節の移り変わりの味わいなど、生きていることの幸せを自分なりにつかんでいる。そこがすごいと私は思うのです。
私事になりますが、学生時代を終え社会に出る時、「さあ、がんばらねば。競争社会だもんな。人との関係も保ちながら、自分に与えられた仕事はキッチリこなしていこう!」と力みすぎた感があったのか、思い通りにいかない仕事、人間関係、その他の問題に遭遇し、心身の体調を崩してしまい、その立ち直りにも時間を要した経験をしました。
その後、10年ほどの間、方丈記をはじめ色んな本と出会い、自分を客観的に見つめなおすことができるようになり、まわりに惑わされない、自分のペースを作る という生き方を体得できたのでした。
そうした多くの本の中でも「方丈記」は、年を重ねるごとに私の心に寄り添ってくれる作品になっています。
以下に、「方丈記」から得られた私なりの思いをまとめてみます。
複雑な現代社会に生きる私たち。誰にも不安、恐怖、孤独といったストレスがあると思います。一人ひとりの悩みは違うと思いますが、私が「方丈記」から得た生きるヒントは下記のとおりです。
(あくまでも私感で自分なりの解釈も含んでいることをおことわりしておきます。)
● 常に変化し続けるこの世の時のはざまで、私自身がこの世に生まれたこと自体が奇跡だ。
● この世では、自分の力の及ばないところで様々な出来事が起きてしまう。(災害、事件、現代では事故、社会政治問題なども)
● また、自分のまわりの人も、自分の思い通りになるわけではない。それぞれ違う人間。考え方、生き方が違うのは当然。これも仕方ないと割り切ることだ。
● ただ、だからと言って、これらのことを憂い、嘆き続ける必要はない。なぜなら、良くも悪くもそれらは常に形を変え移り変わっていく。大切なことは、今の状況をしっかり受け止めて自分なりの最善を尽くすことだ。
● 自分の”苦しみ”を心に重く抱え過ぎてはいけない。なぜなら、万物が姿を変える中、自らの苦しみも変化し続ける。未来永劫続くことはない。
● どんな状況にあっても決してあきらめず、希望を持つことで幸せに近づくこともできる。人にはそういう力が備わっているのだから。
方丈記は、全体を通すと随想のようにさりげない文体で淡々と書かれ、当時の世情、政情、人々の考え方に触れることができる文学作品にも感じられます。
ただ、読み返すたびに、今を生きる私たちにも通用する大きな教え=「変化し続ける世の中にあって大切な「自分自身」を見失ってはいけないよ。なぜなら、今を生きているのは” あなた ”なのだから」という哲学書にも感じるのです。
遠い時代から現代に向けられたメッセージ、あなたも是非読んでみられてはいかがでしょうか。
【 ココロに残る曲 ~ ” いのち ”への感謝 】
竹内まりや / いのちの歌
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