繰り返す毎日に意味を見いだせない【お悩み相談】

お悩み相談

ここでは、過去にお受けした相談事例をもとに、「お悩み相談」としてその概要を紹介したいと思います。なお、相談の趣旨は変わらぬよう、個人が特定できないよう内容の一部のみを変えています。

【ご相談内容】 仕事と家庭、自分の役割をこなしていくだけの日々。本当に自分がやりたかったことは何か、わからないまま毎日が過ぎていく。生きている意味は何だろうと考えることも。

50歳、サラリーマン。中間管理職として仕事はそつなくこなし信頼も得ている。家族は、妻と子供2人(大学生、高校生)の4人家族。

山本さん(仮名)は、地元の大学を出てそのまま地元で大手の商社に就職。入社当時から持ち前の責任感とやる気で懸命に仕事をこなしてきた。27歳のとき同じ会社に勤務していた現在の妻と結婚。子どもが生まれてからは、なんとか会社とのバランスを取りながら家庭サービスもこなし、良き夫、良き父として頑張ってきたという自覚を持っている。

仕事・家庭ともに安定を得てきた山本さんだが、最近、なぜか朝方に頭がボーッとして、仕事中も一瞬集中力が途切れたり、休みも気持ちが落ち着かなくなったりと、いろんな面で変調をきたしている。その理由として思い当たるのは、「懸命に頑張ってきた。やり切り感がある。今はただ繰り返すだけの日々に生きる意味を感じなくなっている」ということのようだ。

最近は、気分転換を図るために、親しい友人との飲み会で楽しく語らったり、休みの日に妻とドライブに行くなどしてるようだが、その瞬間だけが楽しくて、すぐ我に返り虚しさを感じる自分がいる。特に飲み会では友人のノリに合わせて楽しさを演じている自分がとても嫌とのこと。人との距離感も感じる。

川のほとりのベンチに座る人々のグループ

山本さんは「特に今の生活に大きな不満があるわけではない。ただ、このままずっとこの生活でいいのか、自分は何を求めているのかがよくわからない」と話された。

また、「自分は幼い頃から、まじめで目標を立てて頑張るタイプ。そのほうがやりがいがあるから。頑張ったから今の安定した生活を得られたんだとの自負はあります。」と話した。

今が満たされないということは、新たな生き方を考える時期に来ているということ

仕事に家庭にと精一杯頑張ってこられた山本さん。その原動力は何だったのでしょう。仕事への責任感。あるいはプライド。そして家族への愛情。きっとそうしたことを支えに励んでこられたのかもしれません。もうひとつ言えることは、生育歴のなかで「期待通りに頑張らなければ」という思いが根付いた可能性もあります。そうした場合、気づかないうち我慢、抑えてきた感情があるかもしれません。

また言い換えれば、これまでは自分の生き方を振り返る時間をとれなかったのかもしれません。ちょうど今が、仕事上の実績や信頼、家庭では家族の安定、子育ての一段落といった”自分なりの目標”に到達した時期なのでしょう。これまでを振り返り、これからの新たな生き方について考えるいい機会とも言えます。

新たな生き方といっても、転職する、今の生活をガラッと変えるといったことではありません。これまで社会的評価や地位、家族の安泰を求めて懸命に歩いてきたのならば、これからは、全く別の「自分の本心が求めるもの」が何かを探してみるということです。そこには、「人からどう見られるだろうか」といったことも不要ですし、儲けを得るということからも離れて、自由に思いを巡らせることが大切です。

自分に眠っていた夢を叶えるための行動=大きなチャレンジでも趣味でもかまわないし、社会の役に立つこと=NPO,NGOなどへの参加、ボランティア活動でもかまいません。思い切って自分の時間をそれらに少しずつ振り分けるやり方もあります。とにかく、仕事場、家庭以外に広く視野を向けてみることから始めましょう。

「何も新たな目的は見つからない」、「なかなか今のライフスタイルを変えられない」ということもあります。その時は無理をする必要はありません。ただ、いつも自分の本心に”生き方を問いかける”作業はやめないようにしましょう。その意識自体が、自分が落ち込んだ時に冷静に自分を励ましてくれる支えになります。

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ひとつ言えることがあります。山本さんは仕事でも家族も安定を得ることができました。このこと自体が当たり前のことではありません。山本さんの頑張りはもちろん、職場の周りの人の支え、家族の支えがあってこそで偶然得ることができた”幸せ”かもしれません。そうした自分を支えてくれた身近な人に”愛情を示す”こともこれからできる新たなことです。

生きる意味については、それぞれの人生において明確な答えは見つからないのかもしれません。ナチスの強制収容所の過酷な体験を生き抜いたオーストリアの精神科医  ヴィクトール・フランクルは、著書「夜と霧」の中で人生の意味を積極的に探究することの大切さを訴えかけています。極限状態の環境の中で書かれた尊い著書で、読むごとに読者の心に生きる意味を問いかけてくる魂の作品です。

メンタルヘルス・キャリア形成カウンセラー。
これまで1000人余りの方々の心の声をお聴きしてきました。皆「自分らしく、より良く生きたい」と願っています。そうした思いを少しでも応援できればと思っています。

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